2013年11月12日火曜日

日本では見られないサインデザインに関する著書をまとめてみた

このエントリーをはてなブックマークに追加

僕の日本の大学での専攻は都市社会学なんですが、その学問の観点から公共交通機関のサインシステムや記号がもたらす社会変容の研究や調査をしています。

と、こんな風に格好つけているように聞こえますが、実際にやっているのは日頃からサインを意識して行動したり、できるだけ本(学問書、漫画も美術書も)を読んで、いろんな角度から理論を組み立てられるようにしてます、まあ学部生だしね。都市を中を歩くだけで、疑問や不可思議な点がポンポン出てくるので、よく歩いてます。

本題を戻すと、こうしたサインシステム、すごく僕は「都市を都市たらしめる」上で重要だと思っているのですが、学生だけでなく教員にもなかなか理解されない。日本では全く発達していない分野なのだと思います。

そうモヤモヤしていたら、こうして英語圏の国に来る機会があったので、図書館に行って色々調べてみたんです。そうしてみると欧米を中心に研究や論文が盛んであるということが分かった。それに関する書籍もあったので、メモ書き程度に記してみました。


1.Helvetica and the New York City Subway System



本のタイトルどおり、サインシステムの王道である(むしろカリグラフィという点でも)フォント「Helvetica」の誕生とニューヨークの地下鉄の歴史をサインシステムを通じてまとめた本です。

昔、ニューヨークの地下鉄は3社に分かれていたとか、アールデコの影響を受けこういったサインが誕生したとか、サインシステムの本髄を伝えるというよりは本当に美術書的歴史書という感じになっています。


これが最初のほうのタイルで表現したサイン。こうしたものが基になって、カリグラフィ界で有名なマシュー・カーターが「Helvetica」を考案するんですね。Helveticaが如何にして、サインの概念を変えたか分かるのではないでしょうか。



驚きなのが、コーポレートデザインやアイデンティティ(CD・CI)のコンサルタントビジネスとして有名な「Lippincott & Margulies」が記されていることである。企業と同様に、サインシステムも時代に合ったタイプフェースが重要であり、日々変えていくべきということを僕は暗に表していると思うのです。野良サインとか、もうね、変えるべきですよ。

しかしこの本、色んな固有名詞が出てきて、日頃から英文を読まない僕にとっては結構きついものでした。美術書みたいにサッと読むのがいいと思います。

2.The Wayfinding Handbook



これは実践的で、サインシステムの基礎から応用まで、簡潔にまとめた理論書で、非常にエディトリアルデザインが美しく読みやすいものになっています。サインシステムというのは英語では「Wayfinding System」というのがベターだそうで、前者でネイティブスピーカーに話しても最初全く通じませんでした。

これももちろん、コカコーラをはじめとしたコーポレートアイデンティティを紹介しつつ、サインの重要性を説いています。おそらくCIもWayfinding Systemも「Information Design(情報デザイン)」に帰結するのではないかと思います。良書です。

3.Signage System & Information Graphics



これはもしかしたら情報デザインを極めた現時点で最高の本かもしれません。構成は、まず公共のデザインを「Signage systems」「Wayfinding system」「Directional system」に分けて定義することから始めています。そして文字や記号といった説明をした「理論編」から世界の様々なサインを考察した「実践編」の大きく分けて2つの構成になっています。


これは改訂版のほぼ同じ本なんだけれども、改訂版には著書の裏に「The ultimate book on signage in all its forms, packed with examples from around the world」と書かれており、それくらいの自信があるくらいの究極の本になっている。

4.Construction and Design Manual Wayfinding and Signage.



これは今までのとは少し違った角度から攻めた著書になっています。まず最初の数十ページがデザイナーによるエッセイ、というより美術批評で展開されており、後半が最近のデザインの紹介という感じです。

エッセイに関しては、美術評論だからなのか難しい単語ばかりで非常に読みづらく、読む気すら失せました。本の装丁もデカイくせに、ゴツゴツしており読みづらいです。余程の気合がない限り読めないと思います。しかしアラブ諸国の例もあげているため、例に関してはとても国際色豊かになっておりそこは非常に評価できるポイントです。

5. Walk This Way: Sign Graphics Now



これは美術書で、最近のサインデザインを紹介しています。上の4冊を読んだ後だったので、特に新しい発見はなかったのですが、「将来iPhoneがARの技術を利用してサインデザインの概念を変えるだろう」的な予想をしており面白かったです。(2008年に発行された本のため、またiPhoneも黎明期)


とあるページに「Wolff Olins」という文言を発見したんですが、これも情報デザインなどに重点を置いた有名なデザインの会社。ロンドンにあります。最近ではロンドンオリンピックのサイネージの制作で話題になりました。


こんな感じで、一気に色んな本を読んで、分からない単語をメモしまくってたのですが、正直に言えば英語力は全然追い付いていないので、全て理解したわけではありません。しかしながら、サインデザインが欧米圏では非常に大事にされており、日本でも、もう少し発展させていくべきだということを痛感しました。

それにしても記号がもたらす、企業イメージとか雰囲気って影響力があるし、記号にはすごく求心力があると個人的に思います(ほら、アニメのキャラクタに萌えるのも記号の影響が少なからずあるじゃんw)。あれってすごいですよね。サインデザインがもっと好きになりそうです。

0 件のコメント:

コメントを投稿